Log of a Hypocrite

偽善者

京都に行った。深夜に鴨川のほとりやその三角州で酒を飲んだ。昼間になると、鴨川のほとりで狂人が大きな声で何かを叫んでいた。満開のしだれ桜。青々しくなりゆくソメイヨシノ。春。

 

数日前、人気の少ない横断歩道で信号待ちをしている男と女を見た。男は中年ぐらいの見た目だった。男は女の臀部を鷲掴みにして揉みしだいていた。すかさず自分は「そういうのって、不誠実じゃないですか!」と声を荒げた。しかし男は自分の声に動じず、その手は女の腰の下に堂々と鎮座し、芋虫のようにモゾモゾと動いていた。

 誠実さとはなんだろう。大辞林には「偽りがなく、まじめなこと。真心が感じられるさま」という記述がなされている。また、英語で考えるとhonestyやintegrityが挙げられると思う。dictionaryによると、

honesty - "the quality or fact of being honest; uprightness and fairness."

integrity - adherence to moral and ethical principles; soundness of moralcharacter; honesty.

とある。日本語より細かい差異がある。意訳してしまえば前者は「まごころの誠実」、後者が「倫理と道徳の誠実」と差別化するとわかりやすいだろうか。

性的な行為それ自体はhonestyに関わる事では無いだろう。しかし公共の場で、自分という目撃者が存在してしまっている以上、男の手とその意志はintegrityのかけらも持ち合わせていないことになる。ベンチで互いの身体を弄り合っているカップル。飲み屋でペッティングをしている男女。新歓花見という建前で新入生の女を狙う猿。春という季節、街中にはintegrityが溢れている。